『ゼロの執行人』のテーマはIoT
劇場版『名探偵コナン』シリーズの22作目である『ゼロの執行人』では、大人気キャラクター・安室透を主軸に物語が展開し、多くのファンを魅了しました。
安室透の大抜擢のほか、本作の特長は「IoTテロ」が犯罪の手法として用いられたことです。
時代の最先端を採り入れた内容なのですが、IT業界にでもいない限り、IoTテロというのは少し理解しにくい内容だったようにも思えます。そもそもテレビは爆発するのでしょうか?
今回はこのIoTテロについて考えていきます。
IoTとは何か?
IoTの概要
そもそもIoTとは何なのでしょうか?
IoTはインターネット・オブ・シングス(Internet of Things)の略称であり、「モノのインターネット」と日本語訳されます。
インターネットといえばパソコン同士がつながっているというイメージがあるかと思います。IoTではパソコンだけでなく、エアコン・冷蔵庫などの家電や、畑に備えられた温度計など、さまざまなモノをインターネットでつなげていきます。
IoTの実例
Amazonダッシュ
具体的にいくつかIoTの事例を見ていきます。はじめは「Amazonダッシュ」です。
Amazonダッシュはボタンを押すと、ボタンに応じた商品がAmazonから届くというサービスです。
通常注文するには電話を掛けたり、パソコン・スマホを使ってWebから申し込みをしなければなりませんが、その手続きをボタン一つで行っています。
ペット用品もIoTの時代
ペット用品もIoT化が進んでいます。
日中仕事をしていると、お家のワンちゃん・ネコちゃんのエサやりや様子が気になってしまいますが、最近ではスマホからエサをあげたり、Webカメラを使って様子を確認したりできます。
超スマート社会・Society5.0への取り組み
こうしたIoT技術に日本政府も大いに期待をかけ、IoT技術を介し、サイバー空間と現実世界とが融合された「超スマート社会」の実現を目指しています。
「超スマート社会」とは、「サイバー空間を介してあらゆる産業分野の壁を超えてつながる社会」を指します。この社会では、IT技術により、年齢性別にかかわらず、必要なモノやサービスが過不足なく提供され、だれしも快適に生活ができるとされています。
そして、この「超スマート社会」の実現への取り組みがSociety5.0(ソサエティ5.0)です。
Society5.0とは「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」を意味しています。そしてこのSociety5.0の中心にある技術こそがIoTなのです。
超スマート社会・Society5.0の参考
劇中に登場したIoTテロ
IoTのセキュリティ向上が課題
さまざまモノがインターネットにつながっていくと、遠隔地であっても即座に情報が共有でき、大変便利ではあります。
しかし、その通信が犯罪者の手によって悪用されてしまったら一大事です。
今後IoTが広まっていく中で、モノをインターネットでつなげる技術はより簡単になっていき、多くの人に知られていくことになります。しかしそれは裏を返せば、犯罪の手口が知られていくことにつながります。
「超スマート社会」を目指す日本政府も手をこまねいているわけではありません。総務省はIoT機器に不正アクセスを防ぐ機能を設けることを2020年4月から義務付けると発表しています。
このように、IoTは大きな可能性をもつとともに、普及のためにはさらなるセキュリティの向上が求められています。
ハッキングによる不正使用
IoTが不正利用されるとどうなるのでしょうか。
例えば先ほどのAmazonダッシュで言えば、Amazonへの通信を悪用されると、勝手に大量の商品を注文されてしまうという事態になってしまいます。
こうした金銭的なトラブルだけでも大問題ですが、屋内に設置したWebカメラが不正利用され、家の中の情報(今人がいるのか、どこに通帳があって印鑑があるかなど)が犯罪者によって知られてしまうと、空き巣などさらなる犯罪につながってしまいます。
遠隔操作による犯罪
『ゼロの執行人』で一連のテロの発端となった遠隔操作についてはどうでしょうか。
『ゼロの執行人』の中ではとある家電製品を遠隔操作することで、爆発事故を引き起こしました。
ネタバレを避けて類似の手法で言うと、例えば電子レンジの中にガスボンベを入れ、電子レンジを起動させると爆発させることができます。
この操作だけであればインターネットがなくともできるのですが、電子レンジを遠隔操作することによって犯罪者は安全な位置から、目的の時間に爆発を引き起こすことができます。
IoTテロを防ぐためにできること
こうしたIoT機器の不正利用を防ぐには総務省が義務化を進めているように不正アクセスを防ぐ機能をつけるほか、不要な機器はもともとインターネットに接続しないというような対策があります。
テレビは爆発しないでしょう…
以上見てきたように、『ゼロの執行人』では今後予想されるIoTテロの手法が用いられているのですが、「これはさすがにできないだろう……」というものもあります。
例えば各地のテレビが誤作動を起こし、爆発したりするのですが、こうしたテロはほぼありえないと言ってよいでしょう。
あくまで「不正に操作することができる」というのがIoTテロであるため、操作をしてもできないことは発生することはまずありえません。
テレビのリモコンを操作していたら急に爆発したということがないように、いくらテレビの操作をハッキングしても、それだけで爆発させることは難しいと言えるでしょう。
IoTだけではない、サイバーテロ
今回はIoTテロについて考えていきました。
IoTというのはこれからより暮らしを豊かにしていく可能性を秘めていますが、使い方ひとつ、セキュリティの穴ひとつで犯罪につながってしまいます。
ただ、誤解してはならないのが、こうした犯罪の脅威がIoTにだけ潜んでいるというわけではなく、インターネット全体の問題であるということです。
昨今では「サイバー戦争」「セキュリティインシデント」という言葉が紙面を賑わせていますが、インターネットを使った犯罪は日に日に増えています。
インターネットを使う際には、正しい知識をつけ、メリットとデメリットを把握することが大切です。